雷魚マンH氏の急逝
私は、趣味の一つに淡水魚釣りがあります。若い頃は山岳渓流でフライフィッシングに親しんで来ましたが、急性心臓病(リタイアー後)を患ってからは激しい沢登りなどできなくなり近場の平地でできる釣りに転向しました。幸いなことに、当地には諫早湾干拓調整池というバカ広い淡水湖がありモンスターが潜んでいるらしいです。遠方から来られるアングラーによく出会います。
さて、そんな或る日の夕方、調整池の水門前に夕間詰を狙いに行ったら、真っ赤なレトロなランドクルーザーが駐まっていました。そして、麦わら帽子に白髪混じりの長髪の男性が、車のボンネット前で何やらゴソゴソとフォグランプを外して修理されていました。私は陽も傾きかけ少し心配になり、 “ どうかされましたか?大丈夫ですか?” と声をかけると、いかにもという感じのサンブラスをきめた男性が、穏やかな口調で " はい、大丈夫で〜す。いつものことですよ " と、返事が笑顔とともに返ってきました。
それ以来、淡水ルアー初心者の私は、季節の巡りごとにルアーやラインとロッドのバランスの難しさ、水辺環境とモンスターの生態、テクニックのことなど、沢山のことを教えてもらいました。氏が遠征に来られた時はいつも同行させてもらい、雷魚マンとしての心得も教えてもらいました。氏との出会いにより、釣りは趣味にとどまらないもっと奥深い感慨深い「人生の一部となって辞められないもの」として再認識させられました。
私は、ただただ大きな1本を釣り上げようと、自分なりにポイント探してキャストを繰り返していましたが、H氏は簡単にはキャストしないで水際をジッと眺めたり見て回ったりするだけでなかなかルアーをキャストされませんでした。そして、キャストしてもすぐリールを巻かず、しばらくそのままにしてからルアーを泳がせるという、私とは全く違うやり方した。私のようなやり方だと小さいのは反応すけど、大きいのは警戒して食い付きませんよ、とアドバイスしてもらいました。
つい先日のこと、氏の友人 I 氏から “ 新鮮な魚を持っていくから" という連絡があったから2月18日に森山の漁師料理の店で久しぶりに食事しましょう、と約束をしたばかりの或る日の真夜中、私が寝入って間もなく寝室の携帯が鳴り響きました。慌てて真っ暗の中電話に出ると、氏の息子さんから突然の知らせでした。息子さんは夜分の連絡で恐縮され、丁寧な口調でご自分の紹介の後お父様の辛い悲報を精一杯話されました。私は、ただ“ ハイ " " ハイ” とただ繰り返すのに精一杯でしたが、最後に一言 “ 原因は?”と尋ねると、“ 急性の肺炎でした。部屋で一人で倒れていたのに気付くのが遅かった" と。
森山のセカンドハウスが完成したら、久しぶりに一緒に水際で楽しみましょうと、言っていたばかりでした。
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